首相公邸に幽霊は出るのか~その歴史と内観~

首相公邸に幽霊は出るのか~その歴史と内観~

岸田首相が公邸に入居することとなり、ある都市伝説が話題となっている。
度々各メディアで取り上げられ、今や永田町関係者だけでなく一般にも広く知られることとなった

「首相公邸幽霊出没説」


である。
これは何も週刊誌が面白おかしく適当に騒いでいるだけでなく(本来通常の記事もそうであって欲しいのだが)実際、過去に公邸に住んでいた首相の多くが証言を残している。

最も有名なのは旧公邸時代に森喜朗元首相の語った「ドアノブと軍靴」の話であろう。
当時、森元首相が寝室で床に付こうとした際、誰もいないはずなのにドアノブをカチャカチャと捻る音がし、恐る恐る廊下に出ると大勢の軍靴の足音が遠ざかっていったというものだ。

この話は、森元首相から後任の小泉元首相にも伝えられ、その場では笑い飛ばしていた小泉元首相も後々きちんとお祓いをしていたらしい。
ただ、政治家というのは何かにつけお祓いだのお参りだのをするものであり、この話があったからお祓いを頼んだかどうかというのはわからない(特に建物関係は絶対と言っていいほどお祓いを行う)
森元首相以外にも羽田元首相、細川元首相やそのご夫人などもその存在を感じていたようで、昨年新型コロナウイルスにより、志半ばで亡くなられた羽田雄一郎氏は父が首相であった当時、公邸に塩をまいてから出勤するのが日課であったという。

これらは旧公邸でのエピソードであるが、現公邸に建て替えられた後も幽霊の目撃談は続いている。
麻生太郎元首相(現副総裁)も選挙特番におけるアンケートで幽霊を見た、と答えているし、こちらは少し怪しい話だが、民主党当時の鳩山由紀夫元首相の夫人である鳩山幸氏も幽霊を目撃したらしい。

もっとも、後者は普段から水晶占いに凝っていたりオカルトに浸かっていることや、そもそも旦那自体が幽霊なのか宇宙人なのか、少なくともこの世のものとは思えないような御仁であることから眉唾ものであり、旦那を幽霊と見間違えたのではないかとも思えるが……と、これ以上言うとさすがに怒られそうなのでやめておこう。

ともかく、公邸で幽霊を見たという目撃談は絶えず、そのほとんどが「軍服姿」「軍靴の音」など旧軍に関わる証言なのである。


それもそのはず、現公邸は旧首相官邸の建物を曳家して改装されたものであり建物自体は変わっておらず、立地としても50mほどしか離れていない。
そして、旧首相官邸といえば五・一五事件や二・二六事件で多くの血が流れた場所であり事故物件も事故物件……

大事故物件である。

ただ、両事件ともに戦闘で軍人は殉職しておらず、五・一五事件においては当時の犬養首相と警察官1名、二・二六事件においては警察官5名が殉職している。
なお、二・二六事件においては鎮圧部隊側の兵士が暖房の炭火による一酸化炭素中毒等で死亡しているが、彼らの霊とも考えられないであろう。
と、なるとやはりその後の裁判で死刑が言い渡された士官や、自決した士官、もしくは志を果たせず獄中や、その後の大戦で戦死した者達の霊と考えるのが妥当であろうか。

ただ、そんな幽霊がいないという方がおかしいような首相公邸であるが……
2013年、旧民主党の故・加賀谷健参院議員が質問主意書において
「旧官邸である公邸には、二・二六事件などの幽霊が出るとのうわさがあるが、それは事実か。安倍総理が引っ越さないのはそのためか」
と問うたところ政府側の回答は
「承知していない」
とのことであった。

これを大真面目に閣議決定しているのだから面白いが、「そんなことはない」と断言しないあたりがミソなのか。
その後の当時の菅官房長官の会見でも記者が「長官も公邸は何度か入ったと思うが、(幽霊の)気配はあるか」と尋ねると

「言われればそうかな、と思う」

と冗談まじりに答えたのが印象的であった。
とんだ閣内不一致である。

また、安倍元首相についても2013年に公邸で党幹部を招いた会食を行った際に公邸に引っ越さない理由を聞かれ「幽霊が出るから嫌なんです」と冗談まじりに答えていた。
「誰か一緒に住みましょうよ」と漏らしたこともある。

それが理由か、はたまた公邸入りすると短命政権に終わるというジンクスからか、安倍氏、菅氏ともに在任中公邸に入居することはなかった。

「人の話をよく聞く男」である岸田首相には、幽霊に出くわしたらぜひ彼等の無念もしっかりと聞いていただきたい。もっとも、残念ながら相手は「人」ではないことから難しいかもしれないが。

さて、ここまでは首相公邸の幽霊にまつわる証言や、その歴史についてお話してきたが、ここからは実際の内観についてお話しようと思う。
現官邸がガラス張りで日の光が入りやすい(天気の良い日は神秘的ですらある)一方、旧官邸、つまり現首相公邸は日当たりが悪く、内部もより重厚感があるレトロなデザインとなっており、薄暗い場所が多くなっている。


ところどころに設置されている動物の像もその不気味さに拍車をかけており、屋上に四方を見張るように目を光らせている4つのミミズクの石像は、官邸の知恵の象徴であり、今も不眠で首相を守護しているというという話であるが、やはり少しホラーチックだ。


他にも一階の大食堂前には3匹のカエル、正面玄関には2匹の猫の石像があり、これらも一種の「気配」を感じる要因となっているのではないだろうか。

また、実際に首相公邸には「人間以外の住人」が多くいるようで、入居した元首相らはゴキブリやネズミなどをしょっちゅう目にしたという。
これらのことも公邸のイメージを悪くする一因であると言えるだろう。

永田町や霞が関にゴキブリやネズミなんているのか?
とお思いの方もいるかもしれないが、これは経験上はっきりと言えるが

めちゃくちゃいる。

実際に私も各庁舎や国会内でゴキブリを目にしたことがあるし、国会裏の歩道では以前、ネズミが死んでいた。
ある庁舎の地下にはほぼ開かずの間となっている倉庫があり、ゴキブリとネズミのパラダイスと化していることから誰も近づきたがらない……なんて話も耳にしたことがある。

皆さんのイメージとは異なるかもしれないが、国会だの省庁だのは別に他の民間企業などと比べて気合を入れて掃除されているわけではなく、なんならそこらの大企業のビルの方が絶対に綺麗である。

話を戻そう。結論として首相公邸に幽霊はいるのか、いないのか。

率直に言えば


幽霊がいようといなかろうと怖い。


というのが事実である。
住めと言われても正直住みたくないのはわかるし、仮に私が首相だとしても住まないであろう。
あんなところで眠れる気がしない。

適当なまとめサイトのような結論になってしまって申し訳ないが、幽霊がいるかいないかというのは「幽霊」という存在そのものが明らかになっていない現在では断定することはできない。

ただ、仮に幽霊そのものが存在するとしたら、これほど「出そう」な物件というのもそう他にないだろう。証言にも統一性がある(集団催眠の類だと言われればそれまでかもしれないが)

故に、本記事の結論としては


「幽霊」が存在するならば首相公邸にもいると思われる。


より、まとめサイト風に言うのであれば


「もし、幽霊が存在するのならば
首相公邸にもいるのではないでしょうか!?
皆さんはどう思いますか?」


と、言ったところであろうか。

真実は、あなたの目で確かめてほしい。
どうやら長居しないと幽霊は姿を現してはくれないようだ。

頑張ればあなたにも住むチャンスはあるはすだ。……頑張れば










政治カテゴリの最新記事