さらば議員会館 落選議員の地獄の3日間

さらば議員会館 落選議員の地獄の3日間


議員会館。

国会と一つ道路を挟んだだけ(地下は繋がっている)の超一等地に立つ、当選議員全員に与えられる永田町での活動拠点である。

どの党であっても関係なく、同じ建物であり、同じフロアに与野党構わず割り振られている。

会議室に食堂、喫茶店にコンビニから歯医者、理髪店、保育所、さらにはマッサージ店まで色々と揃っているのだが……今回は議員会館の細かい紹介をする記事ではないので割愛させていただく。
もし、気になる方がいたらコメントやTwitterなどでお声がけいただきたい(どっちみち食堂の紹介はいずれするつもりだが)

とにかく前述の通り快適なスペースであり、清潔なのはもちろん、セキュリティもきちんとしていて安全、しかも喫煙所も各階に設置されているという、議員にとっても寛げる場所となっている。

しかし!当たり前であるが、ここに部屋を持てるのは現職の議員のみ。引き続き立候補する場合は、投開票日まで部屋を使用することができるものの、落選となればなんと


3日以内に追い出されることとなる。




「比例名簿の後ろの方にのっかってたら受かっちゃった」とか
「せっかく議員になったのにすぐ解散で落選」

……なんて方でない限り、会館事務所というのはその議員毎のカラーにカスタマイズされており、こんなのいるか?みたいなでっかい私物や、いつのだよ……といった資料が溢れていたりする。

特にベテランとなれば、なんか謎の植物があったり、資料も何十年分のものが溜まっていたり……
「3日で出て行けなんて……」
というのが本音であろう。

しかも、会館の職員(今回の場合は衆院の職員)はとってもドライだ。
彼らにとってはもはや「ただの人」である落選議員にあれこれと気を使う必要はなく、公務員という立場上、めったなことでは職を失わないということもあり、職を失った議員や秘書達の気持ちを理解してくれることもない
(実際落選を経験した秘書の中にはこの経験から職員を忌み嫌っている方もいる)

彼らから事務的に「はよせいや」という通告が、度々来るので、長年の思い出に浸っている暇などない。

そんなどん底の気持ちで事務所の片付けを進めていると、目に入るのが当選議員の部屋に運び込まれる大量の胡蝶蘭や巨大なダルマ。
ベテランともなれば、廊下にまではみ出るほどのお祝いを横目に自分達は不用品を仕分け、せっせせっせと荷物を運び出す。



地獄である。
これほど明暗分かれる瞬間というのもなかなか目にすることはできないだろう。


当選議員とその秘書とて、どの党であろうとそんな空気の中ワイワイキャッキャとやるわけにもいかず、お通夜のような空気が廊下やエレベーターに漂っている。

さらに、落選した議員の秘書達には、この期間もう一つやらねばいけない重要なことがある。
それが


「就活」


である。

落ちた議員は「ただの人」であるが、実際はベテランであれば何らかのポストをもらったり、選挙区の支部長を続けたり……などとそこまで行きどころには困らなかったりする。

しかし、秘書はそうはいかない。

議員秘書なんて特殊な職業の経験は、他の業界ではほとんど評価されず、しかも政治色が強いので、さぁ他業種に転職だ!とはいかないのが実際だ(後援会関連や、代議士と親交の深い企業、もしくは代議士自身やその家計の経営している企業に雇ってもらうというパターンはある)

当人達もそれはわかっているし、そもそも永田町で生きていくという覚悟を決めたから秘書になっている。
と、なれば次の宿主を探すしかない。

要領の良い(というかしたたかな?)秘書は「落選したらどうぞよろしく」ということで、予め話をつけてある場合も多々あるが、そうでない者達はこの期間、新たに仕える親分を探しに会館中を飛び回ることになる。

秘書には様々なタイプがおり、仕事一筋であくまでも代議士の利益になることのみを行うタイプもいれば、それこそ得票には繋がらないであろう業界での付き合いをとことん大事にするタイプもいる。
勿論、こういった時に「就職先」が見つかりやすいのは後者であり、後々立候補し、バッジを付けることになりやすいのも同様だ。

……ここだけの話、政治家の当落にも一部同じようなことが言えたりするのだが。
   

世間一般では「戦い」はすっかり終わったかのような雰囲気であるが、落選した候補者や秘書にとってはこれからか「戦い」……否、当選した候補者も含め、皆が既に次の選挙のための「戦い」を始めているのだ。

永田町は、敗者にはとことん厳しい。



故に彼らは、たとえ地獄が終わっても、常在戦場の精神なのである











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