ある時、こんな言葉を耳にした。
「警察ってだけでどんな人でも銃持てるんだから怖いよね」
無論、その場でツカツカと歩み寄って否定することなどはしなかったが、せっかくこうやって話せる場をいただいているので、少しそれについて言わせていただきたい。
まず、警察官として現場に出る前に警察学校、キャリアについては警察大学校に入れられるということはご存知である方も多いのではないかと思う。
自衛隊での教育が「育て上げるためのもの」と言われるのと反対に、警察学校での教育は「振り落とすためのもの」であると言われている。
要は警察学校は、警察官としての適正がないものを、教育段階で弾くための機関でもあるということだ。
面接では見えてこなかったことが、集団生活の中で見えてくるということは珍しいことではない。
精神が不安定であったり、拳銃を持たせるに値しないような者の多くは、この段階で弾き出されることが大半である。
しかし、無事卒業できたからと言って、その後に精神的に不安定にならないとも限らないし、潜在的な素行の悪さが集団生活で炙り出されない場合というのも往々にしてある。
そのような場合、民間企業が素行の悪い者や精神的に不安定な者に権限を与えないのと同様に、警察も所属長の判断(実際は会議によって決定されるが)特定の警察官に拳銃を持たせないようにすることができるということはあまり知られていないのではないだろうか。
これは担当する職務において拳銃が必要ない故に「持たない」ものとは別であり、拳銃を持つ権利そのものが一時的になくなるということである(精神状態の悪化などが原因の場合、回復後、医師や所属長の判断に基づき、再び拳銃を携帯できるようになる)
このような「拳銃を持たない」ではなく「持てない」警察官というのは少なからずおり、ある有識者によれば全警察官のうちおよそ3%が該当するのではないかということであった。
これについては若干大袈裟だとはしても、公開されているデータで言えば、2012年の千葉県警においてはおよそ1万人の警察官のうち、89人が「拳銃を持てない警察官」であったことが明らかになっている。
このデータを元にすれば千葉県警においては、全警察官のうち1%弱が「拳銃を持てない警察官」であったということになる。
何もそこまで珍しい話でないことがおわかりいただけただろうか。
私はあまり現場の警察官との関わりは多い方ではないが、実際に「拳銃を持てない警察官」の話は聞いたことがある。
その多くが素行不良というよりは「精神的に追い詰められてしまった」方々であり、ほとんどが他人との接触が少ない内勤に回されているという話であった。
一般の方からすれば、拳銃は警察官の権力の象徴であり、恐ろしいように見えるかもしれない。
特に、地域課、いわゆる交番勤務の警察官においては高卒レベルの頭脳と健康的な肉体があれば誰でもなることができるということから、不安に思われるのも仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。
市民に対する態度が悪い警察官というのも一定数存在することも確かだ。
しかし、警察としても不祥事などは起こさないほうが良いに決まっており、警察官は世間一般の認識よりも厳しく管理されている。
特に拳銃関連についてはその最たるものであり、この記事では触れないが、もし反響があれば警察官の拳銃事情がどれだけ面倒なものであるかもお伝えできればと思う。
読者の皆さんには、当記事を通して、「警察官であればどんな者でも銃を持てる」という訳ではないことをご理解いただければ幸いである。
素行や精神状態に応じた管理というものが、知られていないだけできちんと行われているのだ。
市民に向かってやたらめったら発砲する初期の両津勘吉のような警官はいないと安心していただいてよい。
とはいえ、警察官による拳銃の不正使用による不祥事というのはしばしば起こっていることも事実であり、警察にはより一層厳しい対策が求められる。
……そしてこれは個人的な意見であるが「拳銃」というわかりやすい武器を持っている故に警察官は注目されるのであって、人を殺めることのできる手段を持つ職業というのは多く存在する。
医師や看護師による事件などは警察官のそれよりもよっぽど多いわけであるし、あまり意識されないかもしれないが「車」というのは日本で一番人を殺めている凶器であると言っても過言ではない。
特にトラックなどの大型車はその衝突により多くの場合で相手の命を奪うことは皆さんも日々のニュースでご存じの通りであり、ある程度過程で振り落とされ、その後も細かに組織に管理され続けている警察官が拳銃を持つことより、免許さえ手に入れれば何tもの金属の塊を動かすことができるということをもう少し恐れていただきたいものだ。
※本記事は管理人によって原稿から一部表現の変更等が行われております、ご了承下さい。
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