選挙カーは本当に「意味がない」のか

選挙カーは本当に「意味がない」のか


「うるせぇ!!!黙ってろ!!!!!」


選挙カーに対してこう思っている方も多いのではないでしょうか。
ごもっとも。うるさいですよね選挙カー、おいしいですよねカブトムシ。
日曜の昼間、天気もよくポカポカしてなんとなくうたた寝しそうになってる時……やっとお子さんを寝かしつけた直後……夜勤上がりでようやく眠れたと思ったら……

「○○△△!○○△△は皆様の暮らしを……」

なんて言われても殺意が湧くのは当然です。
こっちは現在進行系でお前の声で暮らしを壊されているのだが、と。
ここが日本だから良かったものの、シリア辺りならRPGで候補者もろとも選挙カーがふっ飛ばされていることでしょう。
そしてこうも思うはずです

「あんなの意味ないだろ!!!!!」

……はい、ここからが本題です。
よく、意味ない意味ないと言われる選挙カー……ホントに意味がないんでしょうか?
結論から言うとあります。バリバリあります。
というか意味のないことを政治家はやりません。
関西学院大学の研究チームが行った研究では、選挙カーが自宅の側まで来た人は、その候補者に投票した割合は平均の約2倍になったというデータが出ています。
【参考】www.asahi.com/amp/articles/ASKCF6S66KCFPIHB02Z.html.
ですが、それを聞いても本当かな?と思う方も多いと思います。
実はその時点で、あなたは選挙カーのターゲットではないのです。では、選挙カーのターゲットとなる人々は誰か。
主な3つの属性を以下でご紹介いたします。

1.既に支持者である方々


実は選挙カーのターゲットとして一番大きいのがこれです。
えぇっ!?選挙カーって知らない人に知ってもらうためのものじゃないの?確かにそういう側面もありますが、冒頭に申し上げた通り一般の方からの印象というのは「うるせぇ!」が一番最初に来るのです。
でも支持者は黙ってても投票するよね……?と思われるかもしれませんが、実はそうとも限りません。
「〇〇さんに投票する!」と意気込んで投票所に向かう人は支持者の中でも熱心な支持者であり、支持者の中には「〇〇さんで決まりだろう」、「私が投票しなくても○○さんは勝つだろう」、「○○さんがいいけどわざわざ投票所に行かなくても……」などと支持はしているものの投票への腰が重い方々も沢山いらっしゃいます。
そこで選挙カーです。
「接戦」「苦しい戦い」「全力でぶつかり合い」そのためにどうか清き一票を!そう言って回ることにより「これは投票に行かねばならん」と支持者の重い腰を上げることになるのです。
また、お年寄りの中には選挙の時期自体を忘れている方もいます。そういった方に思い出させることにも選挙カーは有効なのです。元々候補者を支持していない方にとってはうるさい雑音かもしれませんが、消極的にしろ支持をしている人にはむしろ「自分のところまで来てくれた」というプラスイメージにすらなるのです。

2.田舎に住む方々

1の最後と関連しているのですが、地方でも特に田舎の方に住む方々にとっては「自分のところまで来てくれた」というのが大きなプラスポイントとなります。
故に、都会よりも地方の方が選挙カーでの活動は重要であり、例として地方では「●km先に2、3軒家があるから」というだけで選挙カーは何もない田舎道を遥々走っていったりします。
馬鹿馬鹿しいように思えるかもしれませんが、人口の少ない地方では、その数票がとても重要なのです。有権者側としても、中心地から離れていればいるほど自分達が気にかけられているというのはやはり嬉しいもので、投票行動にとても繋がりやすいのです。

3.義務感を持つ無党派層

「国民として選挙は行かなきゃ!」
「でも誰が誰だかわかんねーし、何してるかも知らねー!」
「何も決めてないけど投票所にきたぜ!」

いやおらんやろそんな奴……

いるんです。しかも結構な数。

おそらく、この記事を読んでいる時点である程度政治に興味があるのでしょうから、そのような皆さんには信じ難いことかもしれません。
ですが、あなたが認識していないだけで、そのような人々は多数存在するのです。
投票所に行き、ボールペンを手に取るも、誰を記入すればいいかわからない。名簿を眺めてみたらそこにはどこかで聞いたことのある名前が!よし!この人でいいや!
これが山口4区であればこのような事態は発生しないでしょうが、閣僚経験者のいない地区の国政選挙や、地方選挙などでは往々にして起こりうることなのです。
そんな時、その「どこかで聞いたことがある」という記憶の断片の正体は選挙カーから流れてきた声であることが多いのです。一部には「選挙カーで聞こえてきた名前以外に入れる」という捻くれた思考の持ち主もいるにはいますが、そういったケースを除いては選挙カーはこのような場合の投票行動に多大な影響を与えるのです。

いかがでしたか?「選挙カーなんて意味ない」という主張は半分正解で半分間違いだということです。意味もなく闇雲に走り回っているというわけではなく、実際はきちんとターゲッティングがされていたということなのです。

今はもうネット選挙の時代。アナログな単純接触効果を求めることに意味はない。
そんな論調が高まりがちな昨今ですが、はっきり言ってそれが当てはまるのは「若者」に関してだけです。
選挙の現場においては未だ、投票率の高い高齢者の動向が戦局を左右しています。地方議員でSNSをやっている方が少ないのもこのためです。いくらSNSを駆使しようとも、高齢者の目には一切届きません。選挙カーが嫌いな方には残念なお話ですが、今の若者世代が高齢者と呼ばれるようになる時代まで、選挙カーがなくなることはないでしょう。

これから2週間近く、選挙カーが走り回る時期となります。この記事を読んだ方々には「うるさい」選挙カーもどこか違った風に聞こえるのではないでしょうか。

え?うるさいものはうるさい?
あっ、はい。そうですよね

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